<目耳録> 物差し
2022年8月20日 16時00分 (8月20日 16時00分更新)
プロとして理想のフィギュアスケートを追い求める。羽生結弦選手が競技会からの引退を表明した会見での意欲にあふれた言葉に、八年前のインタビューを思い出した。
ソチ五輪と世界選手権で優勝した直後。達成感があってしかるべき十九歳が「理想との距離は縮まらない」と話した。
その真意を「三十センチの物差し」に例えて教えてくれた。努力してそれを一センチ前に動かす。進めた三十センチ先には、前に進んだ分だけさらに輝きを増した理想が見える。だから、目標に達することはない。「ただ理想が大きくなるだけ。達成感を味わえないからこそ努力できる幸せがある」
計り知れないほどの向上心は、会見での言葉にもみなぎっていた。ルールの制約もある競技から解き放たれ、三十センチ先に誰も見たことのない滑りを思い描いているのだと思う。
(海老名徳馬)
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