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安倍元首相の国葬費用「国会通さず税金使うのは間違い」 予備費支出に批判の声「災害とは違う」

2022年8月9日 06時00分
 安倍晋三元首相が銃撃されて死亡した事件は8日で1カ月を迎えた。岸田文雄首相の主導で、政府は早々に国葬の実施を閣議決定したものの、世論は二分している。費用は予備費で賄われる見込みだが、国会の議論を経ることなく支出されることに対し、識者からは予算の使い道を議会がチェックする「財政民主主義」の理念に反するとの批判が出ている。(山口哲人)

◆財政民主主義の理念に反する

 安倍氏の国葬は9月27日に行われる。費用は明らかになっていないが、各国から首脳級の参列も予想され、多額を要するのは必至。政府が半額を負担した中曽根康弘元首相の内閣・自民党合同葬(2020年)は、首相経験者の葬儀としては過去最高の約1億9000万円だった。
 税金などの詳細な使い道は、国民の代表者で構成される国会の議決に基づいて決めなければならないというのが「財政民主主義」の原則だ。一方、政府が国葬の財源に充てる方向の予備費は、憲法87条が「予見し難い予算の不足に充てる」目的で、あらかじめ使途を定めず計上することを認める予算。内閣の判断で支出し、使った場合は国会の事後承諾を得る仕組みになっている。
 ただ、制度の主眼は自然災害など急を要する事態に備えることだ。野党からは「災害対策などに予備費執行はあり得るが、国葬はわけが違う。国会が関与すべきだ」(立憲民主党の泉健太代表)などと疑問の声が上がる。中曽根氏の合同葬にも同様に予備費が使われており、野党は批判していた。

◆臨時国会では政府の説明なし

 7月22日にあった国葬実施の閣議決定から当日までは2カ月以上あり、政府が補正予算案を編成することも可能だったとみられるが、参院選を受けた先の臨時国会は新たな参院議長らの選出だけで3日間の会期を終えた。政府による説明は閉会中審査に持ち越されたが、日程は決まっていない。
 公文書改ざんなどを含む森友学園問題に関する著書がある大川一夫弁護士は「多くの国民が反対しているのに、国会を通さず税金を使うのは財政民主主義の点でも間違っている」と主張する。
 松野博一官房長官は記者会見で、国葬への予備費支出が適正か問われたのに対し、「財政民主主義の観点から憲法や財政法に沿って対応する」と述べるにとどめた。
国葬を巡っては、共同通信社の7月末の世論調査で「反対」「どちらかといえば反対」が計53.3%を占め、「賛成」「どちらかといえば賛成」の計45.1%を上回った。野党からは実施の基準が不明確で、法的根拠のあいまいさが指摘される。元財務官僚で明治大の田中秀明教授(財政学)は「国葬の基準を事前に策定しなかったのは政府の怠慢であり、直ちに策定すべきだ」と強調する。

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