80年代という世界共通の記憶を鍵にして、HAGANEは新たな扉をこじ開けた。笑いと郷愁と圧倒的な演奏力。この三つを同時に届けられるバンドが、世界にどれほどいるだろう。そしてその扉の先に、本物の景色が広がり始めている。四月のデンマーク・EPIC FEST、七月のスペイン・ROCK IMPERIUM FESTIVAL、ドイツ・ROCKHARZ、さらにベルリン単独公演。何度も夢想してきた「海外のステージに立つ彼女たち」が、もう夢物語ではなくなった。六月の八周年記念ライブを経て、彼女たちは世界へと飛び立つ。
深夜のラジオから流れ出した最初の一音に、全身が凍りついた。アイアン・メイデンを深く愛する鈴木杏樹の曲紹介に導かれて、世界で最初に解き放たれたHAGANEの新曲「We are The Knight」。決闘の幕開けを告げるようなドラミングが空気を裂き、ギターが鋭く切り込み、大ブレイクを経て、凪希の低音が堂々と宣言する——「We are the Knight. HEY」。自分の名前を呼ばれたような錯覚に全身が粟立った。剣士という名を背負ってきた全てのファンへ、彼女たちは遂にアンセムを贈ってくれたのだ。
「HEY」のコール&レスポンスを耳にした瞬間、未来のライブハウスの光景が鮮明に浮かんだ。青い光の海で、数千の剣士が一つの拳を突き上げ、一つの声を返す夜。ソロはたっぷりと様式美を纏い、Sakuraの指先がかつてのギターヒーローたちの記憶を呼び覚ます。そして凪希。ハイトーンの鮮烈さとは異なる、あの太く艶のあるミドルレンジで告げられる「We are the Knight」の一節に、何度でも鳥肌が立つ。懐かしさと新しさが幾重にも折り重なった、HAGANEにしか鳴らせない一曲だ。
ロスキレの深夜、異国の地でEPIC FESTのトリを真っ向勝負のセットリストで射抜いてみせた彼女たちが、凱旋の余韻も冷めやらぬうちにこの曲を世界へ放った意味を思う。次に待つのはスペインのROCK IMPERIUM、ドイツのROCKHARZ、そしてベルリン単独公演。異国のフロアで、言葉の違うメタラーたちが「We are the Knight. HEY」と拳を突き上げる夜は、もう約束された未来だ。HAGANEの音楽に心を焦がした全ての者が、あの一声で同じ旗の下に集う。剣士という名は、もはや日本だけのものではない。配信解禁まであと数日。この曲を全身で浴びる日まで、胸の鼓動が静まる気配はない。
発表が連鎖するように飛び込んでくる一日だった。明日解禁の「We are The Knight」、七月九日のニューEP『METAL QUEST』、同日発売となる「Amour Chain」のCD、そして名古屋を皮切りに全七公演を駆け抜けるリリースツアー――。ひとつだけでも胸が躍る知らせが、波のように押し寄せてくる。
『METAL QUEST』というタイトルに、思わず息を呑んだ。LAメタルの輝きを纏った「Black Diamond」から、ブリティッシュな香気を孕む「We are The Knight」へ。作品ごとに異なる「METAL」の顔を覗かせてきた彼女たちが、その探求そのものを一枚のEPに刻む。QUESTという言葉には、ゴールへ向かう一本道ではなく、道中の一つひとつの出会いを肯定する響きがある。ハーモニックメタルという広大な地図を、彼女たち四人が今も旅の途上で塗り替え続けているのだと、改めて思い知らされた。